タバコじゃない植物を吸う?
少し前まで、僕はタバコを吸っていた。
12年近く続けていた喫煙をやめて、最初こそなかなか大変だったものの、今ではタバコを吸いたいという欲求もほとんどなくなった。
そんなある日、ネットを眺めていてふと知ったことがある。
世の中には、タバコ以外にも「火をつけて吸う」という楽しみ方をされてきた植物があるらしい。
もちろん、ここで言っているのは違法なものではない。
ハーブの類だ。
ミントやラベンダー、ダミアナなど、調べてみると「ハーバルスモーク」と呼ばれるものがいくつも出てくる。
その中で特に気になったのが、
ブルーロータス(Blue Lotus)
という植物だった。
青い蓮。
名前からして、なんだか怪しい。
調べてみると「リラックス」「瞑想」なんて言葉まで出てくる。
……これは気になる。
というわけで買ってみた。

例によってAmazon。


内容量20gで、僕が購入した時の値段は1,339円だった(2026年8月現在)。

中身。
まんま乾燥した花そのものが入っている……。
そして袋を開けた瞬間から香ってくる濃厚な花の香り……。
例えるなら、ちょっと聞こえは悪いかもしれないけど100均のアロマオイルコーナーみたいな感じ。
正直人を選ぶかもしれない。
ただ、いきなり火をつけて吸うのもどうなのよ、ということで、
まずは本来の用途であるお茶として飲んでみることにした。
そもそもブルーロータスとは何なのか
ブルーロータスの学名は「Nymphaea caerulea」。
「青い蓮」と呼ばれているけれど、植物学的にはスイレンの仲間らしい。
古代エジプトとの関わりが深い植物として知られていて、現在でも乾燥させた花がお茶やハーブ製品として販売されている。
そしてネットで調べると、ブルーロータスには「リラックスできる」「気分が穏やかになる」といった話がたくさん出てくる。
ただし、この辺は少し注意が必要だ。
ブルーロータスについて語られる際には「アポモルヒネ」や「ヌシフェリン」といった成分が精神作用に関係していると説明されることがある。
ところが2023年に発表された研究では、本物と確認されたブルーロータスの抽出物を分析したところ、これらの成分はほとんど検出されなかったという。
つまり、
「ブルーロータスを飲めば、この成分によってリラックスできる」
と単純に説明できるほど、現時点ではハッキリしていないらしい。
なんだ。
ますます謎の植物になってきた。
実際にブルーロータスのお茶を飲んでみた
そんなわけで、乾燥したブルーロータスをお茶にして飲んでみた。

裏面、ラベルの説明書きによるとお花一輪に対して300~400mlの熱湯で抽出ということらしい。

お花一輪は約2.0g。
一袋の内容量が20gだから、10杯分ということになる。
お茶としては結構高級な部類の金額になるんじゃないかな、これって。

とりあえずガラス製のコーヒーサーバーに花を一輪入れて、300mlの熱湯を注いでみた。

お湯を入れた傍から、黄色い色がどんどん出てくる。
入れた瞬間はかなり鮮やかな黄色で、時間が経つにつれて少しオレンジっぽくなってくる。
そして一気に立ち昇る香り。
この香り、あれだ。
どこかで嗅いだことがあると思ったら、GATSBYのヘアワックス、アレっぽい香りがする。
これです。
でも香りの成分は熱に弱いのか、思ったより早く飛んで弱まっている気がする。
鼻が慣れたのかもしれないけれど。

お湯に浸っても花はしおしおのまま。

マグカップに注いだ状態。
見た目はかなり普通のお茶。
味、飲んでみた感想
味はやっぱりお茶ではない。
でも不味いなんてことはなく、意外とスルッと飲めてしまった。
心なしか甘い感じがする。花の香りのせいかもしれないけれど。
ちなみに僕は普段からジャスミン茶を愛飲していて、花の香りには慣れているから、あまり違和感を感じないのかも。
まあ、特段美味しいなんてこともない。よくあるハーブティーって感じ。
ただ、今回は味を楽しむのが目的ではない。
目的はその成分による作用を体験すること。
なので、抽出した300mlは全量きっちり飲み切る。
………
飲んでしばらくして思った。
……なんか、落ち着いてる気がする。
もちろん「急激に眠くなる」とか「酔ったようになる」とか、そんな強烈な変化ではない。
僕が感じたのは、
頭と身体が、ほんの少しだけ弛緩しているような感覚。
でも不快なぼんやり感はない。
むしろ思考については逆で、頭の中に普段いくつも流れている余計なノイズが少し減って、スッキリしているように感じた。
身体は少し緩んでいる。
でも頭は比較的クリア。
そんな不思議な感覚だった。
……いや。
単なる気のせいかもしれない。
珍しい青い花のお茶なんか淹れて、
「これはリラックスするお茶なんだ……」
と思いながら飲んでいるのだから、そりゃ多少はリラックスするだろう。
人間なんてそんなものである。
本当にブルーロータスの作用なのか?
ここが、この植物の面白いところだと思う。
僕自身は確かに何らかの変化を感じた。
しかし、それがブルーロータスに含まれる成分によるものなのか、温かいお茶をゆっくり飲んだからなのか、香りによるものなのか、それとも完全に僕の思い込みなのかは分からない。
そして現在の研究を見る限り、
「ブルーロータスには人間をリラックスさせる効果があります」
と断言できるほどの根拠はまだないようだ。
一方で、ブルーロータス製品を摂取・吸入したあと、強い眠気や知覚の変化などを起こして救急受診した症例も報告されている。
つまり、
「科学的根拠が乏しい=何も作用しない」
とも言い切れない。
さらに市販の「ブルーロータス」をうたうVAPE製品から、合成カンナビノイドが検出されたという報告まである。
この辺まで来ると、植物そのものの話と、市販されている濃縮エキスやVAPE製品の話は分けて考えた方がよさそうだ。
「効くお茶」というより、ちょっと面白い嗜好品
今回実際に飲んでみて、個人的にはブルーロータスを
「すごいリラックス効果のあるハーブ」
として紹介するより、
「なんだかちょっと面白いお茶」
くらいに捉えるのが一番しっくりくる。
少なくとも僕は飲んでいて嫌いじゃなかった。
お湯を沸かして、見慣れない青い花を入れて、少し待って、ゆっくり飲む。
それだけでも普段とは違う時間になる。
仮に僕が感じたリラックス感の大部分がプラセボだったとしても、
「これを飲む時間は少し力を抜く」
という習慣ができるなら、それはそれで悪くない。
ただし、「天然の植物だから安全」と考えるのは違う。
ブルーロータスは人間での有効性や安全性について十分な研究が揃っているとは言い難く、濃縮されたエキスやVAPE製品まで含めて同じものとして扱うべきでもない。
また、乾燥した植物を燃やして煙を吸い込むこと自体にも呼吸器へのリスクはある。
だから強い作用を求めて大量に摂ったり、よく分からない濃縮製品に手を出したりするより、
「こんな変わったお茶があるんだ」
くらいの距離感で楽しむのが良いんじゃないだろうか。
それにしても。
タバコをやめた結果、
「そういえば人間って、タバコ以外に何を吸ってきたんだろう?」
という方向に興味が向くとは思わなかった。
世の中には、まだまだ知らない嗜好品がある。
ブルーロータス。
効いているのか。
気のせいなのか。
今のところ僕にもよく分からない。
でも――
なんかちょっと落ち着く気はする。
それくらいが、この謎めいた青い花にはちょうどいいのかもしれない。

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